さくらんぼなあたしと王子様

「どした?
人が多かったから恥ずかしくなった?」

あたしは小さく首を横に振った。

目の前にはあたしの大好きな…人。

優しくしないでっ。

そんな優しい表情で瞳にあたしを

映さないで。

そんな優しい声で言葉を紡がないでっ。

………あきらめられなくなっちゃうよ。

「莉愛?」

雛斗があたしの目に少し溜まっていた

涙を袖で拭いた。

雛斗が「莉愛」って呼ぶとすごく、

自分の名前が好きになる。

そして、こんなに優しく名前を呼んで

くれる人が好きなあたし自身も

少しだけ、  

ほんのちょっぴりだけど好きに

なれる……気がするの。

雛斗、雛斗のお陰であたし

少しだけ前より自分の事

好きになれたよ…。