王子様。

本当は初めからわかってたの。

私はあなたに…
何も伝えられないって。

何となくだけど、そう感じたの。

だけどそんなの嫌だったから。
すごく悲しかったから。

ナイフを手にして、
涙が溢れ出て。
どうしようもない気持ちを抑えつけて。

海に… 投げ捨てる。

ナイフと、私ごと。

あなたの笑顔を見た瞬間。
私はそれだけでいいって…
そう想ったの。


王子様。

あなたがずっと、
これからも幸せなら…
私は消えても構わない。


王子様。

もう二度と、奏でることができない声を…
あなたに告げるから。


王子様。

叫んでも叫んでも届かない歌を
私は笑顔で、泡となる。

でもちょっとだけ…

寂しいな…。



ねぇ、叶うのなら。

海に還っていく、私でもいい…。


そう… 一度だけでも、

あなたに見つめてほしかった。



――――「さようなら」


王子様と私に。