「あ、いたいた。探しちゃったよ。佳音、衣装届いたから試着してみて」

あたしが光君と歩いていると、突然現れた部長さんがそう言ってあたしの腕をひく。

「え!?ちょ・・・」

「どうせ今はフリーだろ?だったら今のうちに・・・」

いや、そうじゃなくて!

「ちょっと、佳音ちゃん勝手に誘拐するのやめてもらえます?」

あたしが光君に視線を向けようとしたと同時に、肩に感じたぬくもりと光君の声。

そっと顔をあげると光君があたしを抱きしめていた。

「っ!光君!?」

「おい、お前なんだよ」

「佳音と同じクラスの杉村光。衣装試着なら、俺も行く」

・・・え?今光君佳音って呼んだ・・・?しかも俺って・・・。

「・・・まぁいいか」

フリーズしたあたしを連れて、2人は歩き出した。


「はいこれ。そこの仕切りの向こうで着替えてね」

「はい・・・」

部室に着くと、手渡された衣装を身につける。

袴は着方しってるから、あっさり着替え終えることができた。

「こんな感じですか・・・?」

「「・・・だれ?こんな美少年いたっけ・・・?」」

「え・・・あたしですよ!佳音です!」

あたしの言葉に固まっていた2人が口をあんぐり開けて呆けた顔をする。

この時の2人は“人ってこんな変わるんだ・・・”と思っていた。

そんなことを知る由もないあたしは首を傾げてその2人を見守っていたのでした。