「甘いな」
男はあたしを引き寄せると悠々とそれを避ける。
だけど、避けた余裕からできた隙を見逃さないあたり、さすが慧。
「くっ・・・」
男は予想外のことに反応が遅れたようだ。
慧が放った符が男の身をかすった。
“やった!”そう思っていると、突然誰かに腕をひかれ、あたしはバランスを崩す。
「佳音を返してね~」
腕を引いたのはヒロ。
いつもニコニコしている顔は笑ってはいるんだけど・・・無言の圧力が・・・。
「ちっ・・・。まぁいい。次に会った時にはその女は俺のものになるからな。せいぜい今を楽しむがいいさ」
男はそう言い残してスーっと消えていった。
それを合図に皆が息を吐く。
「佳音、無茶しちゃダメだろ」
「ごめんなさい・・・」
祥に怒られたあたしは肩をすくめて謝った。