それから季節は巡って夏になった。

あたしが転校してきて早くも2ヶ月が経ち、みんなとも仲良くなっていた。

「夏休みだぁ!」

そして今は夏休み前日のHRがおわったところ。

皆、解放感に満ちた顔で帰りの用意をしている。

あたしが帰り仕度をしていると、急に影ができた。

「佳音ちゃん」

頭の上から聞こえたその声にゆっくり顔をあげると、そこには同じクラスの確か・・・田口君が立っていた。

「どうかしましたか?」

いまだに慧達以外の男の子が苦手なあたしは敬語でそう問いかけた。

「あの・・・夏休みだし俺とどこかでかけない?」

「・・・へ?」

意外な言葉に目を見開いたあたしに、田口君が口を開きかけたその時・・・

「ごめんね~。佳音ちゃんは僕達との予定でいっぱいだから~」

後ろから抱きついてきた光君が田口君にそういうと、田口君は俯きがちで自分の席に戻った。

「・・・そろそろ離れない?」

「えぇ・・・」

こんなやりとりも今となっては日常の一部になりつつあった。