-杏奈Side

息ができない。
本当に南なのかも分からない。

「南?本当に南なの?」

「だったら何?」

「なんで…こんなことするの?」
「ったく、甘ったれは未だにわかんねぇのかよ。別にお前になんて一つも興味ないし。」

「みなみ…?」

「だから、お前は玲に近づくためのただの道具。」

「おい、お前いい加減にしろ。杏奈にはなんの罪もない。」

「玲…どういうこと?」

「後で説明する。」

「おい、南。お前、あいつの…」
「そうだよ。私は片瀬 美緒の妹。」

「前から名字が同じだなとは思ってた。」

「てか、今頃気づいたの?美緒の事は忘れてたんだ。杏奈みたいな女と浮かれて。人殺しのくせに。」

「玲は美緒さんを殺したりなんてしてない。」

「黙って!!あんたも知ったような口叩いて。何が一緒に乗り越えるだよ。」

「南。俺は一度も浮かれたことなんてない。いつも責任を感じてる。美緒の墓参りも行ってる。」

「だから何?自分は悪くないとでも?」

「違う。俺は前を向くって、美緒と約束したんだ。杏奈からも、人を愛する気持ちを教えてもらった。だから、前を向いてるだけだ。」

「……美緒は、私をかばって父のところに残ったの。」