「杏奈、ありがとう。」

「え?私は何もしてないよ。玲の抱えていたことも知らずに、自分の事しか考えてなかった。」

「違う。俺は、杏奈の存在が当たり前になっていたんだ。特別な何かを求め過ぎて。」

「特別?」

「あぁ。あいつが死んでから、俺を裏切らない何か特別な物にこだわっていたんだ。んまぁ、神の様な存在かな。」

「神か……。私は敵わないよ。」

「神なんかに敵うものなんてない。でも、神よりも今俺に大切な物が何か分かったんだよ。」

「………大切な物?」

「杏奈だよ。」

目頭が熱くなり、目の前が涙で霞んだ。

「ただ、杏奈がいてくれるだけでいい。俺を見捨てないでいてくれれば。」

「私は、絶対に裏切らない。玲の全てを受け止めて、自分と共有する。」

「ありがとな。」

「私こそ、大切なことを教えてくれてありがとう。」