-杏奈Side

あたし、玲に助けてもらっちゃった。絶対頼りにしたくなかったのに…悔しい。
涙が出そうになったのを噛み締めた。

「…あっ。じゃあ授業始まるから。」

「大丈夫?」

私はその問い掛けには答えず、‘ただ’走った。

玲の中に‘あたし‘の存在はもうない。
そして、あたしの中に玲の存在があってはならないのだ。

「杏奈!!どうしたの?遅いじゃん。」

「南…。」

「もしかして、玲?」

「う、うん。」

「何があったの?」

「知らない先輩にいきなりキスされそうになって、そしたら玲が助けてくれた。で、あたしが新しい彼女いるのかって聞いたら…うん。って言われた。」

「もしかして、玲には杏奈の存在がないとでも思ってないよね?」

「思うに決まってるじゃん。」

「あー。杏奈…前にも言ったようにもっと自信持ちな。別れてすぐ付き合うって引きずってる証拠じゃん。」

「今は…どうしたらいいか分からない。」

「今はいいよ。時を待つのも大切だと思う。」

「南、ありがとう。」

「うちは杏奈と玲が好きなの。」