英国喜劇リトレイス


「!!」

壁を背に張り付いたまま、俺たちは顔を見合わせた。

見つかってる?
そんなへまはしなかったはずだが。

部屋の向こうから再び声が響いてくる。

「こっちには侵入技術を凌駕する追跡術がある。バレバレだな」


……

仕方ない。

俺たちは小さくうなずくと、その薄い隙間を造っているドアを思いっきり開いた。


「やーっぱりお前だったな。ディゼル」

何人もの女性を惹きつけた美しい笑みが、俺を見つめた。


俺たち四人の中でもっともお気楽で、女性関係に関しては噂が絶えない俺の兄貴──エルヴィス・ランドルフが優雅に、そこに佇んでいた。