英国喜劇リトレイス


イアンは武器が弓だからどうしてもバックアップに回る。
けれど、それゆえに前衛の攻撃はよく見えている。

この異変も、コントロールしようとして俺は隠してたつもりだった。


「よく気づいたなあイアン」

「当たり前だ。俺はお前の従者だぜ? 主人はよく見てなきゃな」


少しだけ嬉しそうなのは、きっと勘違いじゃない。
実際、こいつはよく見てる。


「…どうでもいいけど、じゃあ王子様の家に行くのは明日ってことでいいのね?」

「「うわぁ!!」」

背後からの声に俺たちはそろって飛び上がった。

「おま、どっから出てきたセルマ!!」

「普通にドアから」

俺が心臓はバクバク言わせながら怒鳴ると、耳をふさいでうるさいとアピール。
イアンはひどく疲れたように肩を上下させた。

「ノックくらいしろよ…」

「したよ。気づかないほうが悪い」

イアンは呆れてものも言えないと首を振った。

「とにかく明日だから、今日は休めよ」

「はーい」