英国喜劇リトレイス


「さっきもちょっと出たけど、王様の執政はうまくいってなかった。それで国民に大きな不満が溜まってる。それは国の裏側でレジスタンスを作って、もう内乱勃発寸前状態なんだよ」

「なんだって…!」

そんな話知らない。
ほんの少しだって…!

いや、違うか。
イアンが俺に流すのを堰きとめてたんだ。

ぼんやりとそんなことを思う内で、俺の手足は水のように冷たくなっていた。

「そんなときにこんなお家騒動。反乱軍にとっては最高のタイミングさ。それでも、一番力のある…」

イアンは俺をチラッと見た。
兄貴の名前を言うのを躊躇っているんだ。
俺が今まで散々嫌ってたから、自然と禁句になっていた。

ここまでわかってそんなこと、言ってもしょうがない。
俺は小さくうなずいた。