英国喜劇リトレイス


魔女の手をとり、走りだす。

走ることで振るわれる腕が、視界に入った。

「!?」

俺は目を瞠った。

俺の腕は薄く白い光に包まれていた。
よく見ると全身も。
それはどんどん薄くなり、遂には消えた。


俺は空いている手を見つめながら、足を緩めて、止まった。

「何だったんだ、今の?」

「ディゼル!」

少し後から、息を切らしたイアンが追いついてくる。

「イアン…」

ひざに手をついて呼吸を落ち着けると、イアンは恨めしげに俺を見上げて睨む。

「ったく、お前いつからそんなに足速くなったんだよ? 見失うかと思ったぜ」