英国喜劇リトレイス

俺のブーツが男のひげを掠め、やつは一旦間合いをとった。

「チッ。すばしっこい山猿だな」

「山賊に言われたかねえよ」


時間を長く使うのはだめだ。
野次馬はもとい、別のやつが脱走に気づいちまう。

勝負は一瞬。
それも……次だ。
それ以上はもう逃げられない。

俺は重い大剣をしっかりと構えた。


「おお、怖い怖い。山猿が大将に歯向かってるぜ」


口はふざけながらも、ひげ面も短剣を顔の前に構えた。


「その口、すぐに閉じてやるよ」


俺は剣先に意識を集中する。

……ッ

何だ?
首筋が小さく痛んだ。

けど、そんなこと気にしている場合じゃない。