英国喜劇リトレイス


レイモンドのエンブレムから目を離して、俺は鏡をまじまじと見つめた。

首筋に二重の円、その中心から4本、放射状に線が伸びている。
円と線で出来た4つの空間に、ぼんやりとシミが浮かび上がっていた。

このシミも、ゆくゆくは何かの形になるだろうことは、なんとなくわかっていた。


「しっかし、何なんだ? この模様は?」

「僕には、何だか時計のように見えますがね」

時計。
そう言われて、巨大な時計の夢が脳裏を掠めた。

……まさかな。関係ないよな

「……時計。タイムリミットの意味とか、ある」

「こ、こんな、ところで、え縁起でも、ありませんよ、ね? セル、セルマさん」