英国喜劇リトレイス

「ああ。いいよ」

俺は何の気なしに言った。
セルマの細い手がベルトに掛かった瞬間、ゾワリと脊髄が啼いた。

そして――


「ぐぅっ……あ゛あ゛ああぁっ!!」

ベルトが肌から離れた途端、首に焼印を押されたかのような痛みが走って、ベッドの上に転がった。

「ディゼル?」

「何事です!?」

何だよこれ!
痛い熱い熱い痛い痛い


見えない鉄が、首の右側辺りに模様を刻む。

痛みにベッドの上で悶えて叫ぶ俺の腕が、誰かに押さえつけられた。

「ああ゛あっ! ぅぁ」

「落ち着いて、ディゼル」

セルマの手が俺の首に翳されると唐突に痛みが引いた。

「――ヒュゥッ」


吸えない息を引き込んで、闇に包まれた。