英国喜劇リトレイス


「いやいや『囲まれてますね』じゃなくて!」

「イアン、兄さんに応援を要請して下さい」

「はい――って、え!?」

あまりにも自然に言われ過ぎて、従いそうになったイアンは声を上げた。

「レイモンド? ここはもう降参するところじゃねえ?」

「要請が終わったら、僕から離れて下さい」

「無視かよ!!」


俺の全力のツッコミも視線で黙殺し、レイモンドは俺を見る。

モノクルのない顔は久しぶりで、どことなく幼い気がするその視線。


『僕は何もせずに負けるのが、何よりも大嫌いです』

昔の言葉が、脳裏に浮かぶ。