だが、今はそれよりも――
「レイモンド、しっかりしろ!」
「五月蝿いですね…そんなに叫ばないで下さい」
人が心配してるのにこいつはっ!
呻きつつ体を起こすレイモンドの左目の瞼から、涙のように血が流れている。
「これを使って下さい」
イアンが差し出す布を受け取ると、傷に押し当てる。
「大丈夫。傷は浅いみたいですから。それより眼鏡が……」
レイモンドが顔を上げるその先に敵の兵士が一人、モノクルを持って立っている。
その手をパッと放し――これ見よがしに俺たちの目の前で、モノクルを踏み砕いた。
メニュー