英国喜劇リトレイス

「何を言いますか。緊張して僕のことも見えていなかった癖に」

平然と馬に乗り、すまし顔のレイモンド。
こいつは最前列にいた筈だし、歩兵の中で馬なんて見つけやすい筈なのに――

あれ? 俺もうこんなに前に来てたのか!


「キョロキョロしないで。狙われますよ。気を抜けるのはテントだけです」

「わーってるよ!!」

やれやれ、とレイモンドは首を振る。

「安心してはいけませんが、気を詰めすぎ、ガチガチです。僕らには加護がついているんですから大丈夫ですよ」

加護……!
そうか!

俺はハッとして右手首を見た。