英国喜劇リトレイス



それぞれが、一斉に走り出すと、静けさを保っていた丘が雄叫び一色に染まった。


後ろの俺は、まだ相手とはまみえていない。
さっき握り直した剣にまた力を入れる。

……ヤバい、怖い

両手は汗に濡れている。

前進する列に合わせて進む。
進む。

敵が近い。剣が、足が鉛になった。


進む。
汗の匂いよりも、むせかえる鉄のが早く迫る。


進む。

進――――


「僕の側から離れないで下さいと言った筈ですよ、ディゼル」

「ぐぇっ!」

痛い。

「上から襟首引くなよ! 絞まるだろが!」