英国喜劇リトレイス



「!!」

突如とした声に俺たちは構える。

影はどんどん大きくなり、俺たちをすっぽりと覆う。

「何だ?」

「……軍艦」

セルマの呟きに海を振り返ると――黒塗りで蒸気機関の煙を上げる軍艦が港に入ってくる。

そして、その甲板、その舳先に一人の姿。


「――兄さんを倒せば、戦いに協力して頂けるのですか。いいことを聞きました」


逆光で顔は見えないが、見間違えることのないシルエット。


「レイモンド!!」

俺とエルヴィスは同時に叫んだ。

三番目の兄貴、レイモンド・ランドルフが、船の上から俺たちを見下ろしていた。