英国喜劇リトレイス


……

ハラリ、音も立てず俺の髪の毛が落ちる。


「…いっつう……」

声を上げたのはエルヴィスの方だった。
左足の太股内側辺りを押さえつけ、うずくまっている。


俺は――無傷だ。


ばくばくと肋を叩きつける心臓は止まるところを知らず、今さらになってドッと汗が吹き出した。

それでも、無傷。

いきなりバランスを失ったおかげで銃弾はこめかみを掠めて消え、振りかぶった剣の柄が重力に従って奴の足に落ちた、という訳だ。

俺はそのままコケてエルヴィスを押し倒し、奴は足だけでなく腰も強かに打ち付け、僅かに涙を浮かべている。