英国喜劇リトレイス


「何より…」

エルヴィスは長いまつげの目を伏せて、紅茶を眺める。
そして、少し自嘲気味に笑って顔を上げた。

「俺はジュダスやお前たちとは違うさ。国より──大事なものがある」

「!?」

いつものらりくらりとしていて、お気楽に遊んでるくせに、その顔だけは真剣で。
俺はその言葉を否定することが出来なかった。

エルヴィスはちらりと後ろに空気のように佇む従者を見上げた。

「?」

何だ? と俺が首をかしげるのと同時に、エルヴィスはソファから立ち上がった。

「さて、これで話は終わりだな。お帰り願おうか」

「いいや、まだだ」

これで終わりになんかさせない。
俺もすっと立ち上がり、まっすぐにエルヴィスを睨む。