「私は、国なんてどうでもいいんですよ。こうして落ち着いて暮らせれば…な」
「でも…この争いを止めない限り、そんなことはできませんよね?」
珍しく、セルマが楯突いた。
入る間を失った俺は紅茶をすすり、荒ぶった熱を落ち着ける。
「それはどういうことですな?」
「簡単なこと。革命が成立しなければ国は不安定なままで、いつしか壊れる。革命が成立したところで反王族派が力を持てば、今まで以上に命の危険は高まるのは道理でしょう」
ああ、そういえば。
顔に出たようで、横のイアンが俺を小突いた。
(お前、気づかなかったのかよ)
(だってエルヴィスの言い草にムカついて)
「それでも、王位に興味はないんですよ。私はな」
「……」
俺にはわからなかった。
この状況で、どうしてこいつが笑顔を向ける事が出来るのか。
家ほど大事といわれた国をどうでもいいと言えるのか。



