今回はイアンじゃない。
そう──俺だ。
「ざっけんなよてめえ!! 今ここまで国が切迫してんのに放置だと? 柄じゃないだ? そんなんが許されると思ってんのか!?」
「ああ」
さらり。
またこいつはのらりくらりと俺の手を──!
俺は最早、エルヴィスの命が狙われているかもしれないなんてことは忘れていた。
こいつがそんな空気を一切出していなかったのがいけないのかもしれない。
「ふざけんじゃねえよ。何でそんな風に言えんだよ。これから何人も人が犠牲になるかもしれないんだぞ!」
「革命は国に向けられたもの。どうせ王位にたったところでさっさと倒されるのが関の山。だったら俺は美しく女性と暮らす方をとるな」
「また珍しい王子様ね。貴方もだけど」
セルマが言うと、エルヴィスは彼女ににっこり笑いかけた。



