~上田の忍小屋にて~
「疾風のバカ!梓様に迷惑を掛けて!」
疾風と私が、忍小屋についてすぐ鈴の怒声が響く。
「わ、悪い……」
疾風の忍術・体術は、月影党一。
だが、姉・鈴の前ではその肩書きは全く意味が無い。
「何で早く声をかけなかったのよ?!」
「えっと……鈴を驚かせようかな……って」
「バカバカバカバカバカ!敵の間者かと思ったんだからね?!」
「だから、ごめんって……」
鈴の怒りは収まりそうにない。
仕方ない。仲裁に入りますか。
「まあまあ、鈴もその辺にしてあげて?」
「はい……ほら、疾風頭下げて!」
「申し訳ありませんでした……」
取り合えず丸く(?)収まったみたい。
二人のやり取りは何だか微笑ましくなるからもう少し見ていたかったけど。
今は忍務が優先。
……佐助が超・不機嫌そうに小屋のまえで立っている。
「えっと…佐助。昨日は……ごめん。」
「……あぁ。気にしてない。」
佐助はこっちに顔を向けようとしない。
いつもと返事が違うし。
「怒ってるの?」
「べ、別に。怒ってなんか…」
「本当に?今日の佐助何か変…あ、いつもだった。」
いつも通りに憎まれ口を叩いてみた。
「はぁ?間抜け顔の梓に言われたくねぇな。」
見下すような、バカにするような顔で返事が返ってきた。
……心配した私がバカだった。
佐助はいつもと変わらずムカつく奴。
あ~!なんで心配なんかしちゃったんだろ!
「サルにバカなんて言われる筋合いなんかないんだから!」
「ふん。所詮、馬鹿は馬鹿だな!」
……結局また憎まれ口の叩き合い。
でも、少し安心したのは気のせい……?
何だか佐助がいつも通り、ムカつく奴でよかった。
そんな気がする……。
私達のやり取りに気付いた鈴たちがあわてて仲裁に入る。
……さっきと立場逆転。
「梓様~幸村様に仲良くと言われたじゃないですか~!」
「隊長!忍務仲良くですよ!」
分かってるよ鈴、疾風。
そんなこと言われたら、言うことは1つ。
「「絶対、無理!!」」


