戦国の月の影


__チュンチュン
雀の声がする。

障子から洩れる朝日が眩しい。


「おはようございます、梓様。」

「鈴……?おはよう。」


ぼ~として頭が回らない。


「さ、早くお支度を。」


鈴が私を布団から追い出して背中を押し、寝室から出す。。


……そうだった。

幸村様のところへ出仕しなくちゃいけないんだ。


__昨日の幸村様の笑顔が浮かぶ。


「鈴っ!朝は握り飯でいい!」

「へ?梓様?」

「私が着替えたらすぐに行くよ!」

「はい♪やる気十分で何よりです!」


鈴はルンルンで握り飯の準備に向かった。


(幸村様………。)


再び幸村様の笑顔が浮かぶ。

幸村様の事が常に頭に浮かんでしまう。

自分で幸村様への気持ちは十分分かってる。


__幸村様の事が好きなんだって。

……だけど、“主として好きなんだ”って思い込む。


『主に恋心を抱いてはいけない。』


これは忍の基本的な心構え。

私は月影党の頭領。

忍の基本を破る訳にはいかない。


「さぁーて、今日も幸村様に精一杯尽くすぞー!」


私は忍。

今日も自分の想いを殺す。