きょろきょろしながら歩くと、ほとんどの屋台が店を畳んでたり、その作業をしているのに気付く。

そんなに時間遅かったっけ?


ポケットから携帯を出し、ディスプレイを見ると22:45と表示されていた。

だから人も少なかったんだね、と少し納得。

人混みが苦手な瑠色が祭りかなんかの通りを普通に歩けるわけないし。


そんなことを考えながら歩いていると、りんご飴の屋台を発見した。

そろそろ畳む準備を始めているかんじだけど、まだ買えそう!


その屋台に駆け寄り、残っているりんご飴たちをじっと見る。

最近は、りんご飴の他に、いちご飴やみかん飴、ぶどう飴、パイン飴とかいろんなものが置いてあるけど、瑠色はやっぱり林檎派!


あー、りんご飴おいし「あれ、瑠色ちゃん?」……誰だよ、瑠色の心の声を遮ったのは。


ふと顔を上げ、屋台を見るとそこには見知った顔。


「夏子さん、雄大さん、こんばんはー」

「おー、瑠色!」


夏子さんと雄大さんは二十五歳の若夫婦で、柚山家が長年お世話になってる八百屋さんを二年前継いだんだ。

瑠色が唯一一人で行ってもきちんと喋れるお店だ。


「もう閉める前だったし、これ、よかったらあげる。」


そう言って夏子さんに渡されたのはりんご飴と姫りんご二つ。


「三つも…いいの?」

「姫りんご一個は紫音にやってやれ。あとは瑠色が食べろ」


作業していた雄大さんは、軍手をはめたままがしがしと頭を撫でてきた。