「もうやだぁ……」


他の学校も入学式が多いのか、電車は満員だった。


「これから毎日通えるか?」

「満員じゃなかったら大丈夫…。」


知らない人と、嫌でも触れてしまう満員電車はどうしても好きになれない。


──普通ぐらいの人の量なら大丈夫なんだけど…。


ふぅ、と溜め息を漏らす。



「出来るだけ車で送り迎えするから。」

「けど紫音…大学は?」

「瑠色の高校から車で十分かからないから大丈夫。」

「じゃあ美乃(ミノ)ちゃんは?」

「美乃はわかってくれてるし。」


美乃ちゃんは紫音の彼女で、瑠色も紫音と同じくらい好き。

瑠色からしたら美乃ちゃんはお姉ちゃん的存在。

一緒にショッピングは当たり前。


紫音の彼女として許せるのは美乃ちゃんだけ。



「…紫音が大丈夫なら甘える。」

「ははっ!瑠色が甘えんのはいつもだろ?」


あはは、と笑いっぱなしの紫音に少し不貞腐れつつも高校に着いた。