思い出せるのは、淡い記憶。

優しい太陽と、その光を遮る大きな金木犀。
私の心を拐っていった、あなたの声。


私が立ち止まると、その声も途切れた。
俯いた狭い視界から、紺のズボンが、青いラインの上履きが、ゆっくりとこちらを向くのが見えた。

5年前の、最後の記憶。