「へっ?!!」

二時間程で、辿り着いた都内の様子を見て、
俺は思わず声を上げた。



普通の雑踏。

スーパーも、コンビニも、
カフェも書店も、
通常営業している。

「マジで、計画停電とかカンベン〜!」
「だよね〜!!
電気止まると、部屋寒いからさァ〜...。」
行き交う人々の、
はしゃぐ声を聞きながら、
俺は母に連れられて、
駅を目指した。



「全く、別の国に来たみたいだ...。」

数時間前まで、
風呂に入れない、
食べるものも満足に無い、
無駄話しなんか出来る心の余裕が無い、

そんな状況下に置かれていた俺は
茫然自失状態で
歩いた。



「こっちは...ッ、
行方不明の友達が何人も居て...、
父さんだって、
無事かどうか分からない...。

それなのに......、
この街のヤツら は安全でッ、
ヘラヘラ笑いながら過ごしている...ッ!!!
なんなんだよッ!!
ちくしょうッ!!!
神様なんて居ねえじゃねえかっ......。」

そんな想いが
俺の中から湧き出た時、
俺は
流れ落ちる涙を止められずに居た。


そんな俺の様子を見た母は、
悲しそうな顔をしながら涙ぐんだ。