引退試合を終えた日、
志賀はあたしに言った

「なあ、晴夏」
「うん?なに?」
「どんなに頑張っても
報われない努力って
あるんだよなあ」
「報われない努力、か」

志賀は続ける

「もし、俺、野球して
なかったらこんなに
一生懸命になるものとか
みつけられなかったかも」
「…そっか」
「でもさ、そう思えるって
すげえ格好良くね?」
「え?」

「やっぱり、報われない
努力なんて、ないわ!」
「え?だってさっき…」
「これだけ達成感感じたら
努力は全部報われてる!」
「志賀…」

(…夕日が綺麗)
赤く照らされた志賀の
背中が小さく見えて、
あたしは志賀の手を握った