「き、桐ちゃん!!」
教室で仕事をしているといきなり入ってきた陽菜。
『ん?次理科室だろ??
忘れ物でもしたのか??』
俺のクラスの次の授業は理科室である。
だから俺は教室で仕事をしている。
「き…桐ちゃん…な…夏希が…」
俺は書類から顔を上げて、陽菜のほうを見た。
『ど、どうしたんだよ?!陽菜!!』
陽菜の目からは大粒の涙が零れていた。
「な…夏希…私と…赤井…」
陽菜は涙で言葉に詰まっている。
そのために何を言っているのかまったく分からない。
『陽菜?落ち着けって……』
俺は陽菜をイスに座らせる。
陽菜の涙は止まる気配を見せない。
どうしていいか俺には分からなかった。