『卒業生を代表して、生徒会長海道夏希さんあいさつお願いします。』


60歳を過ぎている教頭。


なのに頭はハゲてない。

むしろフッサフサ。


そんな教頭があたしの名前を言う。



「はい。」


あたしは小さく返事をして舞台の上に立った。


今日は、卒業式。



待ちに待った、なんて言えないけど、とにかく卒業式なんだ、今日は。



「今日と言う日がこうして元気に迎えられたこと、大変嬉しく思います。」


こういう場で挨拶するのは初めてで、変に緊張するあたし。


でもあたしにしか伝えられないことや、
みんなに伝えたいことがあるから、
あたしは今こうしてここに立っている。


ふと、父兄の席に目をやるとそこには兄貴の姿があった。


兄貴はあたしと目が合うと優しく微笑んでくれた。


卒業式なのに両親2人は仕事だってさ。


ま、別に来てほしくないけどね。



「あたしが今ここに立てているのはたくさんの人のおかげです。


家族、友だち、先生。


いろんな人の支えがあったからあたしは今ここにいれると思うんです。


そんなこと当たり前じゃないか、って思うかもしれません。



でも当たり前なんかじゃない、


あたしはそう思います。」


グルッと体育館全体を見回した。


在校生も卒業生も父兄の人も先生たちも


あたしをジッと見ている。