『夏希…呼び捨てにすんなって。

お前は困った野郎だよな。』


「で、話はそれだけ??」

桐ちゃんの言葉をスルーする。


『何そんなに焦ってるんだよ??』


桐ちゃん

なんで分からないのかなぁ~??


「今日も練習あるじゃんか!!

桐ちゃんだって来るでしょ??」

桐ちゃんは納得顔。


天然でバカで鈍感なこの教師。

でも生徒思いで熱くて誰よりも生徒に理解があるこの教師。

やっぱりいい先生だよ

と、密かに桐ちゃんに感動しているあたし。


「大ちゃんっ!!
大ちゃんはさ、彼女いないんだよねっ?!」

桐ちゃんがブツブツ言っているのをほっておいて、あたしは大ちゃんのほうを向く。


『そうですよ??』

ってか敬語かいっ!!


「大ちゃん、敬語気持ち悪いからやめてよ。

んでもって”さん”って言うのも気持ち悪いから。

夏希でいいよっ」


そうそう。

教師が生徒に敬語は気持ち悪いし、
”さん”って言うのも慣れない呼び方で気持ち悪い。


『夏希…ですか??』


「ぷはっっっ」

思わず吹き出した私。

だってさ、夏希って呼んだときに少し頬赤くなってるんだよ??

何恥ずかしがってんだよ…


『笑わないでくださいよ~』

って待ってよ、大ちゃん。


「敬語、禁止ですけど??」

大ちゃんは髪の毛を掻いて困った様子。


『夏希っっ!!!!』

桐ちゃんに名簿で殴られる。


「痛いって、バカ桐島っ!!」

私は桐ちゃんを睨む。


『バカは余計。

島先生困らすようなことはするなって。

ほら、俺もすぐ行くから部活行けよ。』


「はいはい、分かりましたよーだ。」

重い腰を上げて職員室を出た。


「そーだっ!!
大ちゃん野球やってたならうちの部活遊びに来てねぇ~」

私は手をヒラヒラと振り部室に向かったのだった。