『うちの親は2人とも医者なんだけど、ほぼ毎日泊まり込みなんだよ。

とくに最近は夏希も中学生になったことだし病院にずっといる。

たまに帰ってきても疲れて寝てるしな。


まだ夏希が小学生だったときは頻繁に帰ってきてたけどそれでも家事が精一杯で
夏希をどこかに遊びに連れてくこともできなかった……』


仁はたまに言葉を詰まらせながらも家の事情を話してくれた。


”夏希は親の愛って言うの知らないんだ”


と、仁は言ったけど本当は仁も親の愛を知らないんだ。


だから写真の中にいるようなヤツと仁は連んでいたんだと思う。



『だから夏希は大人になろうとしてる。

まだ中学2年なのに…

まだ14歳なのに……


家事も全部こなして、
俺のめんどうまでみてくれて…。

本当は俺が頼れる兄貴じゃないといけないんだろうけど、
夏希が頼れる妹になってるんだよ。

何か抱えてても話してくれないし、
いつも笑ってる。


無理してるんだ…夏希は。


だから桐ちゃん…。

夏希のこと頼むよ。

桐ちゃんにならアイツは本当の姿見せると思うから…』

仁は立ち上がり


『よろしくお願いします。』


と、俺に頭を下げた。



『仁…頭上げろって。』

俺は仁の体を起こす。



『夏希のことはなんとかしてみるけど…

できなかったときは勘弁してくれよ。』


俺は顔を上げた仁に笑いかける。



『桐ちゃん〜』


仁はそんな俺に抱きついた。



『桐ちゃん、やっぱりいい人だ!』


そして俺の背中をバシバシと叩く。


俺は呆気にとられていた。




『あっ!そうだ!桐ちゃんに聞きたいことあったんだった。』


仁は俺から離れる。