『もしもし?海道さんのお宅ですか?』
ずっと学校を休んでいる夏希の家へ電話をかける。
『もしもし?その声は桐ちゃんでしょ?』
電話に出たのは
『仁かよ…………』
夏希の兄貴、仁だった。
『なんですかその声は。
俺で悪かったですね。』
拗ねた様子の仁。
『お前のことはどうでもいい。
夏希のケガの様子は??』
俺は周りの先生達に聞こえないように小さな声で話す。
電話してるのに口調がこれじゃあ怪しまれるからな。
『夏希ですか?
アイツなら元気ですよ。』
仁のあっけらかんとした声。
『今、なんで学校来ないんだ?って思いました??』
仁は電話の向こうで大声を上げて笑っている。
『うるせーよ。
で、なんで学校来ないの??』
なんかリアル高校生と教師の会話みたいだ。
って仁はリアル高校生で俺は教師だから当たり前か。
『俺に聞かないでくださいよ。
ってか桐ちゃんのケー番教えてよ。
学校の電話こんなに使うのはダメでしょ?』
仁に言われて気が付く俺。
仁と電話を始めてまもなく10分が経過しようとしている。
そして周りの先生達に少し疑問を持たせているのか俺の方をじっと見ている。
俺は慌てて仁に携帯の番号を教えた。