「笑えるほど気楽な気分なの?」

ベンチに座る私。


『…………全然。』

桐ちゃんを真っ赤な夕日が照らす。


『全然笑えないし、

全然気楽な気分じゃない。


でも笑わないとどうしようもないから』


桐ちゃんは私の横に腰を下ろし。

大きな溜め息をもらした。



「辛かった?苦しかった?

夏希のこと奪いたかった??」

桐ちゃんは首を縦に振る。



『おとな気ないけど、

めっちゃ辛かったし、苦しかった。


それに陸から奪いたいって、
陸には負けないって思ってる自分がいるんだよ。


教師だろ?

大人だろ?

そう言い聞かせても胸の隅ではそう思っちゃうんだよな。』



「奪えばいいじゃない。

教師だから何?

大人だから何?

そんなの関係ないじゃない。

陸になんと言われようとも
1人の人を奪い合うライバルでしょ?」


教師に説教する私って何よ…。



『陽菜ちゃんさぁ~

教師って言う職業を分かってない。


根本的に教師が生徒を好きになるなんていけないことなんだよ。


ライバルでも陸は生徒だし、

好きな人でも夏希は生徒だし、


生徒はみんな平等に接しなきゃならないワケだよ。


悪いな、陽菜。』


桐ちゃんは私の肩に手を置いて校舎の方へ歩いて行った。


そんな桐ちゃんの後ろ姿に


「バカだね」


と、私は呟いたのだった。