もっといろんな彼を知りたいと思った


「……名前……」


「え?」


「貴方の名前…教えて?」


気づいたらそう聞いていた


「…え…と…」


彼は私から瞳をそらした


…あっ、そか!自分から自己紹介だよね?普通


「自分から名乗らないとだね(笑)私は杏奈。媛夜杏奈って言うの!貴方は?」





「……」


急に黙り込む彼


……?


どうしたんだろ?



「……俺に関わらない方がいい」

「え?」

どうして?


彼の綺麗な切れ長い茶色の瞳が私を捉えた




「意味が分からないって顔してんな…」



そう言うと彼は、小さく笑った


ドキン




こんな状況でもときめいてしまう

きっと自分の頬は赤いだろう……顔が熱い…



ホント心臓に悪い顔だ


「分からなくても自然と分かってくるから……通りかかっても話しかけるな」


彼はそう言うと私の頭をポンッと叩くと



「…じゃあな…」


小さく呟くと


背を向け、屋上から出ていった




涙が次々に出る



どうして…こんなに悲しいのか


自分でも分からなかった