「・・・」

玄関を見ながら、無意識に頬を触っているとさっき触れた彼の柔らかい唇の感触を思い出して一気に顔が熱くなった。

(やばい!!頭から離れない!!)

頭をぶんぶんと振ると綺麗な黒髪が左右に跳ね踊る。

「髪・・・。」

今、家に彼はいない。


私の頬にキスをした彼は、会社からさっきの電話で呼ばれたから行くね。とふわりと優しい笑顔を見せたかと思うと、

「君はこの家から出られないから。」

「おとなしく、ね。」

とどこか冷たい雰囲気で言うと、私の黒髪を手に取り、唇に持っていくと髪にキスを落とした。

その様子を呆けて見ていると、私の髪から手を離し、玄関に向かって踵を返した彼は私がハッと我に返った時にはドアから出る所だった。

慌てて玄関の所に行った私は、彼に向かって

「い、行ってらしゃい。」

と笑顔で言うと、ちょっとビックリした風な彼は小さく笑うと、

「まるで新婚みたいだな。・・・行ってきます。」

と言い、ドアを閉めた。


彼の出て行ったドアを見ながらさっき起きた出来事を回想し終わった私はこれからどうしようかと悩む。