「いないね」

「いないな」



さっきから歩くこと半刻


化け紅葉らしい者は見つからない


「ねぇ、平助」

「なんだよ、鈴」


平助もさすがに疲れたらしい


ちょっと、休もうかと、休める場所を探すため辺りをまみわすと

「っ平助!」


私は、とっさに平助の着物の袖を握りしめて立ち止まった


「ん?鈴、どした?」


私は、真っ直ぐ右を指差す

そう、沢山ある紅葉の木のなかの、一つの根本に、顔を大きな紅葉で隠した人がたっている


そう、紛れもなく、妖怪化け紅葉である


平助も、奴の存在にきずいたのか、辺りに警戒する


いいのか悪いのか、私達の回りには誰もいない


平助は、私を庇うように前にたつ


「いいか、俺から離れんなよ?」


「うん」


緊張しながら、私は、平助の背中にしがみつく


「いくぞ」

「うん」


平助と共に、一歩一歩化け紅葉に近づいていく


そして、ついに平助が叫んだ


「おい!!お前が化け紅葉だなっ!!」