門の前には、私と青年
どうしたものか……
私が、じーっと青年を見つめると、青年は私の肩に置いてある手を退かした
大きな口に色黒の、厳つい顔だが、つぶらな瞳は暖かく、優しさがにじみ出ていた
そして、青年は輝かんばかりの笑顔を私にむけた
「さっきは失礼した、私の名前は、嶋崎勝太という…貴女の名前をおしえてくれぬか?」
なんと、勝太という男には、亡霊の姿が見えるらしい
どうしよう
本当の名前をいうわけにも行かない
ええと、なにか、適当な名前
「鈴」
私はとっさに適当な名前を言った
すると、勝太は私の手を握った
驚いたことに、勝太は亡霊に触れる事ができるらしい
「鈴さん、貴女はもしや、幽霊様ですか?」
幽霊……様?
幽霊に様をつけるなんて変わっているな、こいつ
まあ、幽霊も亡霊も生き霊も同じようなもんだ
私は頷いた
すると、勝太は目を輝かせた
「なんと!!幽霊様とお話ができるなんて……よかったら一度私とお話しして頂けないだろうか!!」
「は、はぁ」
どうやら、勝太は幽霊と話してみたかったらしい…
それに、私もいく宛がない
「じ、じゃあ、少しなら…」
こうして、私は試衛館に足を踏み入れる事となった──
そして、これが勝太との出会いだった


