1850年嘉永3年
私が試衛館に住み着いてから一月くらいがたった
相変わらず土方は暇さえあれば試衛館にきた
門下生も、少しだが増えて、まあなんとかやっている
私はと言うと、暇をもてあましていた
町を歩くのも飽きたし、素振りもできないし、勝太は土方にとられるし
最近は、亡霊の如く道場で稽古する門下生を眺めたり、庭で素振りをする勝太と土方を眺めたりしていた
否、本当に亡霊だが
そして、悲しいことに、私は今日も勝太と土方を眺めていた
「歳三ぉー暇だぁー」
完全に無視された
「ひぃまぁー」
これまた無視だ
何回いっても無視するもんだから、ついに私が見えなくなったかと不安になった
私は素振りをする土方の後ろにいき思いっきり長くうしろで束ねられた黒髪を引っ張った
「いっでぇ゛!!鈴!!何しやがる!!」
痛みに悶える土方をみて、ふぅと胸を撫で下ろした
「歳三があまりにもアホだったから、つい」
私がすっとぼけた顔で言うと、土方は顔をひきつらせて、怒りに震えた
「じ、じゃあ、私はこれで」
さすがにまずいので逃げようと、振り返った瞬間
「いだいっ」
「むぐっ!!」
何かに衝突した