「えい!」
「やあ!」
勇ましい雄叫びと、汗臭さが充満する道場のまえで、お沙代さんがたちどまる
そして、キュッと顔を引き締める
そして、覚悟したように一歩踏み出そうとしたその時
「あれ?お沙代さんじゃないですか 」
ひょっこり現れたのは、またいつものように稽古をさぼって、涼しい顔をした総司だった
「そ、総司さん!あの、今日のよるに、道場に来ていただけませんか!」
お沙代さんは、今にも泣きそうに、早口でそう告げた
お沙代さんの後ろから、そっと総司の顔を見る
困ったように眉を下げて笑う総司
その時、総司とパチッと目があってしまった
いっ!
とっさに目を逸らしてしまう
なんで、あんなに困った顔してるの?
「あの、お沙代さん俺は」
「じゃあ、待ってます!」
「ちょっとお沙代さん!」
この状況に耐えられなくなったのか、総司の返事も聞かずに走り去ってしまうお沙代さん
ゆっくりと総司を見ると、また目が合った
な、なんか気まずいな…
お沙代さんも気になるし、追いかけるか
それに、なんだかこの状況は気まずい
何故か、私は抜き足差し足と、こっそりその場を離れようとした
が、その時だった
「ねえ、鈴檎」
「は、はい!」
そう簡単には行かないわけで
私は、恐る恐る総司を振り返った


