私が暫くぼーっとしていると、お茶をもった山南がやって来た

回りに誰もいないのを確認すると、私の隣にお茶を置いて座った


「鈴、最近元気がないですね」

「べつに」


私は、せっかく心配してくれている山南に、ぶすっとして答えた


「ふふ…それならいいんですけどね」

山南は、そんな私に優しく笑って、お茶を啜った


最近寒くなってきたせいか、山南の眼鏡はよく曇っていた


山南は、お茶を啜るたび眼鏡が曇っては、几帳面にキュッキュッと拭いていた

今日も、お茶のせいで曇った眼鏡を拭こうと外すと

「山南さん、お拭きします」

と、可愛らしい声が聞こえてきた

私は、咄嗟にお茶をおいた

声の主を見ると、可愛らしい丸顔の、お沙代さんが、山南に笑顔を向けていた


どうやら、私の存在には気づいてないらしい

そもそも、お沙代さんには私が見えないから、気づかないのは当たり前だが

お茶が浮いているという怪奇現象が起きることだけは防ぐことができた


山南は、お沙代さんに「大丈夫ですよ」と微笑んだ


「そうですか。実はさっきお洗濯が終わったところ何ですよ」


お沙代さんはそう言って「ふふっ」と微笑むと、

「お隣よろしいですか?」

と言った


山南が「ええ」と言うと、嬉しそうに山南の隣に腰をおろした


それから、二人は他愛もない話をしていた

二人とも楽しそうにしていたので、私はおとなしく黙って二人の話をきいていた