あたしはというと いじめもせず、いじめられもせず 空気みたいな人間 ――― いてもいなくてもよく分からない いじめを止める勇気もないあたしにはピッタリだ 「あ、舞だー、おはよう」 教室の扉に立ち尽くすあたしに 希は近づいてきた さっきまでの怖い笑みはどこかに消えて にこやかで 見とれてしまうような笑顔を浮かべている 「おはよう、希」