―湊―


「まったく…」


呆れた表情のまま姫は自分の生徒会長用の立派な机に向かった。

ブツブツと俺に対して文句を言っている姿を見て自然に笑みが零れた。


「…俺のことだけ気にしてくれてたらなぁ…」


ポツリと呟く俺の視線はまだ姫を向いていた。


いつからだろう。

気がつけば俺は姫の事を本気で好きになっていた。

でも、本気になることを嫌っていた俺は姫へのこの想いを誤魔化すために色んな女の子に手を出していた。

昔から悠姫を呼ぶときには姫(ひめ)って呼んでいた。

その度に、「姫って呼ばないで!」と顔を真っ赤にして怒る姫を見れるのは、俺だけの特権だと嬉しがっていた。

でも、最近では呆れたのかスルーすることが多い。

それが寂しくてついつい怒られるような事をする俺。

断られる恐怖から自分の気持ちをぶつけれない臆病者。

だけど、どんな形でも姫の隣は譲らない。


本当に大好きだから…


「…!アンタねぇ、人の事をジロジロ見てないでさっさと仕事しなさいよ!」


ほら、なんだかんだ言っても俺の視線に気づいてくれる。


この距離をいつまで保ち続けることが出来るんだろう…


もし、突然姫を守る人が現れてしまったら俺はどうするんだろう…―――。