特上男子

『志保ちゃん』



頭を下げて部屋を出ようとした時、智輝さんに名前を呼ばれた。


ドギマギする心臓を必死に抑えながら私は振り返った。



『30分くらい待てる?』

「えっ……?」

『良かったらご飯行かない?』



ご飯!?


それって2人でって事!?



『都合悪い?』

「い、いえっ!!でも……いいんですか?お仕事お忙しいんじゃ……」

『食事する時間くらい取れるよ。だから今日のお礼させてくんない?』



お礼やなんて……私がお礼したいくらいなのに。


それにその甘い笑顔……。


もう堪りませんっ!!



「それじゃあお言葉に甘えて宜しくお願いします」

『直ぐ終わらせて来るからここで待っててな』

「ここでですか!?」

『私たちももう仕事で外に出るから自由に使ってくれて構わないよ』

「すみません。ありがとうございます」



まさか自分が社長室を1人で満喫する日がやってこようとは……。


恐縮です。


すれ違いざまに智輝さんに頭をポンポンとされ、私は1人になってからも暫く呆然と立ち尽くしとった。


頭のてっぺんが熱い。


顔も首も手も……全身熱い。


火照った体は暫く冷めてくれんやった。