特上男子

『怒ってんの?』

「あっ……いや……私の声も大きかったみたいやし……すみません」

『俺に謝る必要ないだろ。それよりあんまり遅くまでこんなところにいたら危ねぇよ』

「貴方のお陰でなんか怒りも収まったみたいやし、そろそろ帰ります」



あのクソ男なんてどうでもいいって思う程、今目の前にいる彼への興味は大きかった。


小学生の時に、初めて好きな人が出来た時の事を思い出すくらいドキドキしとる。



『よく分かんねぇけど、役に立てたみたいで良かったよ』

「……ありがとう、ございました」

『あははッッ、中の上なんて言った奴見返してやれよ。お前ならもっと綺麗になれるよ』



私を励ます為のお世辞だと分かっていても嬉しかった。


名前と連絡先を聞いたら教えてくれるかな。


これでお別れなんてヤダ……絶対ヤダッッ。


私が口を開こうとしたら、彼の方が先に口を開いた。



『ヤバッッもうこんな時間じゃん!!お前も早く帰れよ!!』

「えっ!?ちょっ……ちょっとぉぉぉ…………」



私の声だけが寂しく残り、彼は急いでチャリをこいでそそくさと去って行ってしまった。


そんなぁ…………。