特上男子

もう一人で平気だと言ったのに、女王様はせめて改札まで送ると言ってくれた。


女王様は用事が入ってしまったらしく、電車には乗らない為ここでお別れだ。



「本当に色々とありがとうございました」

「いいのいいの、気にしないで。今度また痴漢に遭ったら強気で胸ぐら掴みなよ」

「は、はい。頑張ります」



綺麗な顔して逞しい人だ。


それに痴漢退治の時の女王様はマジで怖かった。


女王様に見送られながら改札を通った時、私は大事な事を思い出した。


私は急いで振り向き女王様の背中に声を掛けた。



「あのッッ!!すみませんッッッ!!」



女王様が私の呼び掛けに気付き振り向いた。


これぞまさに振り向き美人!!


っじゃなくて!!



「お、お名前教えて頂けませんかッッ!?それと出来れば連絡先もお願いします!!今日のお礼をさせて下さいッッ」



私の言葉に女王様は笑顔でこう言った。



「セリだよ。貴女の名前も教えてくれる?」

「あっ、志保です!!」

「志保ちゃん、お礼なんて気にしなくていいよ。じゃあ気を付けてね」

「えっ、あっ――」



セリさんは最後に涼しげな笑みを見せ人混みの中へと消えてしまった。


セリさん――名前の響きまで可愛っちゃけど。


天は二物を与えないって言うけど、セリさんは二物も三物も持っとるやん。


もっと持っとるかも。


私には一物も備わってないような気がする……なんて不公平な世の中なんやろう。