「お茶冷たくなってない？
淹れなおそうか？」
小さな声で
あのおっさんが絡んだせいで、
と呟いたことは聞こえなかったこととして
こういうところはすごく気がきく男子だ
「平気
あたしちょっと冷めたくらいが良いから」
「朱希未だに猫舌なんだ」
そんな小さいこと覚えてるんだ……
些細なことでキュンとしてしまう自分に動揺する
「猫舌ってそんな治るもんじゃないって」
「そういうもん？」
「そういうもんです」
そしてまた視線がカップに逃げる
このペースで飲んでたらすぐなくなる
分かっていてもこの何とも言えない無言の空気に耐えられないのだ
